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ゲーム世界に入った時とは違い一瞬にして外に降り立った。
すぐ隣に哲二がいることを確認。さらに左右を見回す。
辺りの景色から、ここが小高い丘の途中であることがわかる。鳥のさえずる声や風の音が聞こえる程、のどかな場所だ。
「ほらあの家。他には家らしきものがないから、とりあえず行ってみようか。中に二人反応があるよ」
丘の頂上付近には数本の木と小さな家があった。
家というよりは小屋と呼ぶに相応しいその建物。ゆっくりと近づいてみると中から子供の泣き声が聞こえてきた。
『クリスー……うぅ、クリス会いたいよぅ』
ドアをノックすると中から先程の子供とは違った声の主から返事が返ってきた。
『どちら様ですか?』
一瞬、返答に困ったオレは哲二と目が合う。"僕に任せて"という意味なのか、ゆっくりと頷(うなず)いた。
「僕達は旅をしている者です。相棒が急にお腹が痛いと言い出しまして。申し訳ありませんがお手洗いをお借りできませんか? もう限界みたいです」
哲二、コノヤロー。
それくらい流暢(りゅうちょう)に嘘をつけるのならば、もっと他の理由があるだろっ。と、ありったけの恨み節を込めた目で哲二を睨む。
そんなオレの視線などお構いなしに小芝居を続ける哲二。
「ほらっ! 蓮もうちょっとだから頑張れ! 諦めちゃ駄目だ!」
ガタンと鍵が外された音の後、ゆっくりとドアが開き始めた。
慌て腰を曲げ、腹を抱える仕草でアピールをする。
何でオレがこんなこと……
『あら、あら大変だ。どうぞお入り下さい』
出迎えてくれたのは、少しぽっちゃり気味の可愛らしいおばあちゃんだった。
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