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中に入り、さっと見回す。内部は右側に小さな台所と食卓が、左側にベッドが置かれただけの質素なものだった。
少し曲がった腰を重そうにしながら手招きをするおばあちゃん。
正面のお手洗いに案内され中に入る。
「助かりました。ありがとうございます。アイツはホントにお腹が弱くて困っているんですよ」
ドア越しに、まだ小芝居を続けている哲二の声が聞こえてきた。
いつまでアイツは続けるんだ。だいたい昔から精神的な攻撃で修司やオレをさりげなく痛めつけることが得意で、それを楽しんでいる節がある。
『あらそれは大変ですねぇ。ほらマレック、旅のお方にご挨拶なさい』
『うぇーん。クリスー……』
小学生くらいか、この子供は泣いてばかりだな。
頃合いを見計り、そろそろだと判断しドアを開けた。
「すいません。助かりました」
『いいんですよ。ゆっくりしていって下さいな』
ベッドにうつぶせたマレックに哲二が近づいた。
「マレック君、どうして泣いているんだい?」
優しく問い掛けた哲二はマレックの背中に手を乗せた。
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