終焉。 そして……

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鍵を2つ、電子ロック、暗証番号入力、そしてクロススキャン。 そうしてやっと、皆川の拘留場所に入る。 「どーも。皆川さん。」 「橋本主任。…どうかされましたか?」 「あんまり食ってないんだって?うちの部下が心配してるんだけど。」 「まさか。たくさんいただいてますよ。」 「寝心地が悪いのは勘弁な。」 「とんでもない。よく眠れます。快適です。」 目の下のクマは隠すことのできないほどで、逮捕時と比べて少し痩せていた。 何の気を使ってるんだか分からないが、皆川の疲労がピークに達しているということは一目瞭然。 「…大崎隊長と田辺主任は?」 「お前が心配で、一緒に戻ってきた。」 そう言うと目を見開き、そして安堵の表情。 俺たちが揃ってここにいるということは、彼女の容態の安定を告げているのも同然だから。 (結構、人間臭い奴だな) 「心配されるような器じゃないことくらい理解してますよ。」 「おーおー。おりこうさんだ。 ………皆川。顔を上げて俺を見ろ。」 「…何でしょう。」 ゆっくり顔を上げた皆川と目が合うと、俺はにっこり微笑んだ。 「心が目を覚ました。」 「本当ですか?」 「ああ。2,3日で戻ると言ったのに、約束破ってごめんだとさ。 バカだよな?あいつ。他人の心配より、自分の心配してろって言うの。」 「……………」 「明後日の退院が決まった。退院したら直ぐに会いに行くから、それまで待ってろだとよ。 ちゃんと伝言は伝えたぞ!」 それだけ言うと、直ぐにモニタールームに戻り、皆川の様子を観察する。 室から出て5分。顔を覆い、溜め息をついた。 『…バカですね…倉原さん……ありがとうございます…主任……』 高性能のマイクでも拾うのがやっと。 小さな小さな声でそう呟いた皆川を、蒼依と二人で眺めていた。
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