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ーside心ー
蒼依が病室を出ていった後、涙が出そうな目に力を込めた。
何度も経験したこの感じ。
お互いの力量は分かってる。
その鋭い洞察力。お互いが探られないように、探るように、そうやって時を過ごしてきた。
何よりも厄介なのは、プライベートでの関係。
夫婦になってから、少しの変化でもお互いが理解し合える。
いつバレたんだ?
頭の中はそればかりだった。
そう思っていると、廊下からバタバタと走る足音が聞こえて、部屋のドアが勢いよく開いた。
ビックリしながら見ると私の担当のナースたち。
息を切らせながら私に詰め寄ってきた。
「ちょっと!大崎さん!」
「…はい?」
「ボーッとしてると思ったら、そんなこと考えてたの?」
「頭冷やしなさい!」
「…いや…これには深いワケがあってですね…」
「あんな優しいイケメンは二度と現れないわよ!考え直しなさい!」
「そうよ!バカね!」
現在いるのは回復室。
術後の監視用の部屋だが、直ぐに退院だし、手術の予定もないとのことで、部屋を変わることなく退院を迎えた。
その監視用の部屋、この病院では、バイタルの他に、音声チェックまで入れてるらしく、ナースステーションには会話が筒抜けになってしまう。
私は二人を見ると、思いを伝えた。
「…そんな彼を、私は離婚しなければ、下手したら一生傷付けてしまうことになるんです。
真剣に考えました。いろんなことを。
PSPの事情なので詳しくお話しできませんが…」
「彼を傷付けることになっても、きっと受け止めてくれるわよ!大丈夫!」
「………ハハ………」
即答し二人に、から笑いで答える。
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