終焉。 そして……

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私だって考えた。 これまで以上に頭をフル回転させた。 蒼依が苦しまない方法を模索した。だけど、どれもこれもが傷付けてしまう。 それを見るのが怖い。辛い。 「…あなた、二度目よね?」 「………え?」 「産科以外の入院。…前も思ったけど、今回だって思ったの。すごく素敵な夫婦だって。」 「……………」 「旦那さん、ずっと"信じてる""大丈夫"って、呪文のように言ってた。」 それは初めて聞くこと。 無意識の私に、蒼依が必死だったという証言。 「血塗れのあなたを抱えて、部下の方に殴られるまで離そうとしなかった。 その間、貧血で冷えきったあなたの身体を、自分の体温で温めて駆け付けてきた。 涙を流して、"心を助けて!"って叫んでた。 部下の方が帰ろうと言っても、"俺はここにいなければならないんだ!"って、あなたの傍を離れようともしなかった。」 その情景が目に浮かぶ。必死で、必死で。 「手術中、"心を返して"って神様にずっと祈ってた。何時間も。繰り返し。 術後、まだ危険な状態だと言われても、"手術が無事なら目を覚ます"と信じてた。 毎日流すあなたの涙を理解して。 あなたの涙一つで"お帰り"と言って一緒に泣いたのよ?…まだ目が覚めないうちから。」 "愛してるよ"と何度も口にする彼が、私を生き甲斐のように扱う行動に涙が溢れて止まらない。 私だって愛してる。…愛してるから… 「さっきだってそうじゃない。あなたが言葉にしなくても理解してた。 旦那さん、身も心もすべてあなたに捧げてる。 考え直してよ。…私たち、本当にあなたたち夫婦のこと、大好きなの。」 号泣し始めた私を見て、ナースたちは出ていった。 (…分かってる…分かってるから辛い!…苦しい!) ベッドに突っ伏して、声が漏れないように枕に涙を吸わせた。
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