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「心。お義父さんは、皆川に謝れと頼んでたのか?」
「…うん。自分のせいで苦しめたって。知らなかったこととは言え、皆川の人生を滅茶苦茶にしたのは自分の責任だって。
パパね、皆川のこと、元々純粋でいい子なんだって言ってた。だから私も信じてみようと思ったの。」
モニタールームの向こう側では、皆川が彼女の話を聞くように、こちらを向いていた。
「"皆川の心を救ってやれ"って言われたときは、直ぐに出来ないって言ったけどね。
…皆川の心を壊したのがパパなら、修復するのは私の役目だってさ。頑張らなきゃ!」
「お人好し親子だな。」
「ホントに。父娘して、あれだけ皆川にやられておきながら救うんだ?」
「そうだよ!だってパパは皆川が好きなんだもん!」
「ブハッ!何それ?」
「ママが言ってたの。"心"という名前の由来。
"万人の心を輝かせるように"って。"人の要は心"だって。パパがつけてくれたの。
…ねぇ蒼依?…分かるかな?意味……」
「ああ。分かるよ。"要"と"心"が掛かってるもんな。」
「そう!それで分かったの!パパもママも、ちゃんと皆川のことを思いながら、私が生まれたんだって!
パパとママにとって、私と皆川は兄妹なんだよ?すごいでしょ?」
皆川の表情が和らいだ。
この話は、奴の心を動かすには最高の話だ。
思った以上に、皆川は彼女の夢物語にも似た話を受け入れただろう事が、その表情から伺い知れた。
すると、彼女の顔色が真っ青になり。
「…心?どうした!気分が悪くなったのか?」
「傷口痛むの?陸を呼ぼうか?」
そう叫ぶと、向こうでも心配そうに見上げる奴の姿を目の端に収めた。
「……いや…違う……」
「「……は?」」
「わ…私…!皆川に"お兄ちゃん"なんて言えねぇや…すまんパパ……」
「……………」
「……ギャハハハハ!!!」
…最早、成の笑いは止まらない。
そして皆川をチラッと見ると。
(…………笑ってる………?)
デスクに突っ伏し、身体が若干震えていた。
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