終焉。 そして……

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抱き締めて。安心させて。 それから、左手は頭に添え撫で、右手は背中に回してポンポンと軽く叩く。 「……どーぞ?」 「……蒼依……」 「ん?」 「……こ……怖い……」 「…うん。」 ゆっくり。ゆっくり。 何度も深く息を繰り返しながら語りだした。 「…私は…これから先…皆川と向き合わないといけない… 死刑なら…その日まで…終身刑なら…一生…」 日本の刑法が変わり、組織犯罪法というものが出来て、早18年。 危険分子と判断された組織幹部の場合、死刑か終身刑が課せられる場合がある。 皆川はきっと、このうちのどちらかだろう。 彼女が同情しても、その罪ははるかに重い。 「…パパが…皆川の心を救ってと頼んできて…それを約束したときに覚悟は決まった…」 「うん。」 「あいつが刑期に入っても…何かあれば行く覚悟も…呼んだら行く覚悟も…」 「うん。」 「あ…蒼依がいるのに…ほ…他の人の所に行く…下手したら一生続く…」 「うん。」 「ハハッ…バーカ。」 「何を思い詰めてるんだか…」 ボソッと呟いた2主任も呆れ顔。 二人も彼女の気持ちが理解できた様子で。 「そんな姿…毎日見て…り…陸も成も…幻滅しちゃう……幻滅されたくない…」 「うん。」 「散々迷惑掛けておいて…蒼依…一生傷付けて生きていくなんて…出来ないって…」 「うん。」 流れ出した涙を親指で掬い、されるがままの彼女は、その純粋な涙を止められずに、震えながら俺の首に手を回して抱き付いた。
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