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「逆だったら私は…絶対に耐えきれない!他の女のところなんて行かないで…」
「……アハハハ!」
もう。この可愛い子猫、どうしてくれよう?
あんなに俺を拒否していた奴が、ここまで俺を愛してくれるなど想像できただろうか?
「…どうして笑うの!真剣なのに!」
「可愛いこと言うから。」
「そんなの言ってない!」
「言ったよ。見もしない空想女に嫉妬してどうすんの?」
「く…空想女?どこの女だ!吐け!」
「だから心の空想だろ。」
彼女の肩越しで、笑いを堪えながら2主任がゆっくり退室していくのが見えた。
「蒼依!真面目に聞け!」
「聞いてるって。…じゃ、離婚しよっか。お前の望む通りにしよう。」
「……ーーーーッッ!」
そう言うと、目尻も眉も下げ、情けない顔してさっきの倍の涙を流した。
「何で泣くの?お前がそう望んだんだろ?お前が望むことを俺が叶えてやると前に言ったじゃないか。…離婚したいんだろ?」
「したいわけない!!蒼依のバカ!!」
これも分かってたこと。
こいつはいつだって俺のことを優先に考える。俺が傷付かないように、守るように。
考えと本音を聞くと、抱き寄せキスを繰り返す。
「だったら初めからそう言え!このバカ嫁が!」
「…蒼……依…」
「…姫の言う通り、俺は泣き虫だから離婚されたら泣くよ?俺。」
「…いや…」
「何か辛いことがあっても、一緒に乗り越えていくのが夫婦のあり方だと思う。
俺が傷ついたら、その分心も一緒に傷付く。
それじゃダメなのか?心は俺のために傷付いてくれる?」
「…うぅっ……う……」
現場では決して見せることのない表情。
俺だけが知ってる、彼女の脆さ。
愛しい彼女の悲しみの涙は、俺がなくしてやるんだ。
そう彼女と自分に誓った日から、忘れたことのない約束。
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