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立ち上がった彼女は、はち切れんばかりの笑顔で叫び始めて……
「おーーい!未ー姫ー!ママが来たよーー!
パパも陸も成もいるぞー!ついでにジジーも。」
「ジジーとはなんだ!伸ばす場所間違ってるぞ!心!」
「気にしなーい。おーーい!姫ーー!もう、どこ行ったのかな。
花音?未姫はどこにいるの?」
「……う?」
「う?じゃなくて。未姫はどこ?」
ベッドの下やら、カーテンの裏やら、冷蔵庫の中やら。いろんな場所を捜す彼女。
挙げ句、花音にまで聞く始末。それを呆然と見る長官。
「あ…蒼依くん?心の脳波は正常だったんだよな?心停止の後遺症とか?大丈夫だよな?」
「………多分。」
「多分?」
「2主任は半信半疑だと。…まぁ、見てれば分かります。」
そうし始めて10分が経つ頃、俺たちは、もう二度と味わえないような、これこそ夢物語のような事実に直面する。
「……ちょっと…おい……」
「……ああ。」
花音が宙を見詰め、そこから目を離さずニコニコ笑いだした。
「あーーー♪あーーー♪」
そして、両手を出して掴まろうとする。
「あ、やっと来たの?蒼依ー!この辺にいるらしいよ!陸!成!おいでよ。
花音?これ、花音のお姉ちゃん。」
「……ね?」
「そうだよ。姉ちゃん。」
「ねね!ねーーー!」
「……嘘だろ……?」
未姫がその場にいるように笑う花音。
俺たちが見ても、何もないのに。
心までもが見えてるかのように話す。
いまだに信じられず放心状態。
「あーーーー!ねねーーー!」
花音は宙を見ながら動きだし、後をつけるかのようにハイハイし出す。
視線の先にはテーブルの上。
長官はいつもそこでPCを見ていた。
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