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『随分な事、聞くじゃねーか。
キリか? そうだな、スキル抜きなら十回やって十回は俺が勝つだろうな。スキルがあるとかなり微妙だ。あの水は戦(や)りにくいからなぁ。
まっ、大丈夫だ。安心しろ。Aランクなら何人出たってキリなら負けねーよ。
もうすぐ五時間が経過するから戻ってくるだろ。少しそこで待っとけ』
雷斗さん相手に五分五分?
仮に、雷斗さんが謙遜しているとしても、かなりの強さだろう。
少しだけホッとしたオレはお礼を述べて電話を切った。
「蓮くん、どう? 美咲は?」
不安そうな表情を浮かべた柚葉が声を掛けくる。
出来る限りの笑みを浮かべながら、雷斗さんの話を皆に説明した。
圏外の場所がある事など知らなかったポルンは、気まずいのか部屋に戻っている。
何だかポルンは挙動不審だったけど……気のせいか、アイツはいつも変だからな。
待つことしか出来ない状況に、重苦しい空気が流れる。
ガタンと勢いよく立ち上がったのは修司だ。
「しんみりしてんじゃねーよ! 杏(あんず)より梅が安いだろ!」
修司、正しくは"案ずるより産むがやすし"だ。使い方もかなりズレてるしな。
「修司くん、今は黙ってて」ニコッとした柚葉だが、まったく目が笑っていなかった。
その迫力に負けた男は黙って席につく。
だが、居ても立ってもいられない気持ちは全員同じだ。
美咲……無事でいてくれ。
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