奪われた美咲②

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――――バシュッ!! 消え去った音が私の世界に戻ってきた。乱れた呼吸音、心臓の拍動音、血が滴(したた)る音が広がった。 二つの瞳には、右と左に切り分けられた独裁者写っている。 残ったのはゼリーを斬った感触と、左肩の日本刀。 スキンヘッドの時には、感じ得なかった達成感が込み上げてきた。 Aランクに……勝てた? 『やれば出来るじゃない』 背後から聞こえる声は美月…… アンタに一言いってやる。 左肩の日本刀を抜きながら振り向いた先の光景に、言葉を失った……。 無造作に転がった独裁者の死体が十体以上。消滅していないという事は、ほぼ同時に倒したのだ。 それもスキルと半分になったキセルだけで……。 独裁者一人に集中した私は、戦闘が繰り広げられているなんてまったく気が付かなかった。 レベルが、違う。 『強くなったわね。美咲』 言葉がでない。 この瞳から流れ出る液体は何の意味があるのか、自分でもわからない。 いや、本当はわかっている。 この涙が言外(げんがい)にそれを語ってる。 私はこの人のおかげで強くなれたんだ。 妖艶なチャイナ姿の女性は優しい眼差しで佇(たたず)んでいる。 「み、美月……さん、あ、ありがとう」 心の奥底から、搾り出すように出た言葉だった。 怪訝(けげん)そうな顔つき。 『何よそれ。気持ち悪いわ』 ――な、なんですって?
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