㈱柚カンパニー

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寝ぼけ眼(ねぼけまなこ)をこすりながら、柚葉はふわふわと浮いてやってきた。 「おは……!? ムッキー? あ、いや……あれ、えっと……」 『柚葉様! 僕です! あの時は名乗るのを忘れておりました。ムキダです』 今、柚葉は名前知ってたよな? 修司がしゃしゃり出て後ろからムッキーの肩を組む。 「コイツはムッキーだ。俺がさっき決めたんだ」 何に驚いたかのか、柚葉は唖然としていた。 『昨日は本当にありがとうございました。今日は柚葉様に救われたこの命を預けに参りました』 柚葉は両手の肘を曲げ手首を激しく振っている。 「えっ? い、命? わ、私はいらないよ」 『どうかこの命を君に!』 ムッキーはガバッと大きな体を屈(かが)めると、その場で土下座をし始めた。 まるで告白みたいだな。 「おいムッキー、男が簡単に土下座すんじゃねーよ!」 単細胞男がムッキーの後襟(うしろえり)を掴んで引き回そうとするが重くて動かない。 その二人を止めたいが、近寄りにくいのかオロオロとする柚葉。 「アンタ達っ! 朝っぱらからうるさいっ! 何やってんのよ」 ――げっ!? ただでさえ面倒なこの状況に美咲が起きてきた。 『ぼ、僕はムッキーです』 あんたはもう黙ってろ……。 予想通り事態は混乱した。 命を預けると言い張るムッキー。 逃げ回る柚葉。 それを煽(あお)る修司。 その修司を怒鳴る美咲。 勝手にしてくれ、とこの場を離れたいがそうもいかない。 ――哲二を呼ぶか。
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