奪われた美咲②

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《やっと出れたわい》 ……声が頭に響いてくる。 あれだけの痛みが今はない。 ここは? 真っ暗闇の空間。目の前には般若(はんにゃ)の面を付け着物を着た長い白髪の男。 歌舞伎やら能など伝統芸能は子供の頃から観させられてきたが、そのどれとも違った。 殺気どころか生命の気配すら感じない般若は、こちらを見据えて動かない。 なにこれ? ゲームの演出? 《お主がワシを出したのか?》 「そんな事知らないわ! 一体アンタ誰よ。さっさと私を出しなさいっ!」 早くここから出て、美月に確認しなければならいことがある。 《では……お主に問う》 このミッション開始から、自分の思い通りにならない事が多すぎて、感情が爆発しそうだわ。 《"強さ"とは何だ?》 ――はぁ!? 確かこの間の、蓮が受けたミッションと同じ質問じゃない。 「くだらないわ。いい加減にしなさいよっ! そんな質問は蓮にしたらいいわっ!」 《なっ!? ワシの質問……》 血の気が引いていく。怒りが頂点に達し、爆発するどころか逆に冷めていくのを感じる。 嵐の前の静けさの様な…… 「大体、美月もアンタも何なの? 勝手に人の心に入り込んだり、精神世界だか何だか知らないけど、変なお面つけて偉そうにお主? はぁ? 何時代よ!」 《み、美月とは一体……》 冷たくなった反動でより熱くなっている自分がいる。 さらにボルテージは上がった。 「だから、それが分からないから戻って美月と話したいって言ってんのよっ! 急に現れて勝手に人の世話してるつもりだか知らないけど何様よっ! アンタみたいに暇じゃないの! わかる? アンタ"強さ"が知りたいんだっけ? それなら蓮に聞きなさいよ。アイツはお人好しで人の事ばっかり考えているからきっとアンタみたいね変なお面つけてても教えてくれるわよっ! もし断ったら私がタダじゃおかないから安心しなさいっ!それにアイツは・・・・・・%*≠℃∞◎■$! 〆仝÷#・・・・・・冗談じゃないっ!」 《…………。》 最早(もはや)、自分でも何を話しているのか分からない。
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