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西門城壁
――11:50
いつもの通りオレンジのパーカーにジーンズ。足元には履き慣れたMIKIのエア。
さぁて、そろそろ開戦だな。
手元の妖刀『童子切り』に話し掛けるように呟いた。
「今度はお前が"強さ"を見せてくれよな」
右耳のイヤリングからは機械的な音声が聞こえてくる。
《雷斗様、更新情報です。イベント参加プレイヤー総数17569名》
「はいよ。そうだ、ミュー。開始後は隊長以外からは繋がないでくれ」
《承知致しました》
「固いよ。もっとフランクに話せないのかよ」
《申し訳ございません》
これはSランク特権の一つだ。ギルド音声案内を同行できるシステム。
ギルドのパソコンからこっちのPDAに移動した『ミュー』は、俺の目を通して見たものを全て認識することができる。
リアルタイムに情報を共有することができ便利だ。
まぁ、ミューが人間臭くないのが難点だけどな。
隊長達もそれぞれの音声案内を持っている。
黒いスーツ(背広)にお堅い眼鏡の男が近づいてきた。
『雷斗、10Km先の偵察部隊からの情報で、やっぱり敵は出現していないそうだ』
この低い声の主は凍夜だ。
「予想通り、開始時間ジャストに出現するタイプか」
陣形を上から眺めていると、マイクが差し出されてきた。
「何だよこれ?」
ギロッと眼鏡の奥から憎悪の目が見える。
『リーダーなんだから少しは働けよ! 開戦前に全員の士気を上げる演説でもしろっ!』
相当溜まってるな。
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