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やれやれ。
確かに、凍夜には任せっぱなしだったな。
仕方ねぇ、いっちょやるか。
マイクを握り締め、口元に近づける。
「あーあー。聞こえるな。
俺の名は葉山雷斗。
あと数分で敵が出現する。
何万来るか分からねぇ。
……心配すんな。
イベントだぜ?
楽しまなきゃ損だろ。
茶でも飲みながら、俺の戦いをそこで楽しんでくれ!」
マイクを凍夜に放り投げる。
『おい、雷斗? 作戦が違……』
【師走】発動。
橙色のオーラが両足を包み込む。
すぅっと息を吸い込み、一気に吐き出した。腹の底から声を出す。
「一番槍は、
――俺だっ!」
城壁の地面を蹴り上げ、雲一つない青空へと跳ね上がる。
爽やかな風を全身で受けながら落下していく。
ひょぉぉ! 気持ちいぃ!
落下地点、プレイヤー達の固まりは散り散り(ちりぢり)になっていった。
音もなく着地し、見据えるのは前方の敵軍。
≪正午。モンスター軍が出現しました。総数33500体≫
ミューの声にも反応せず、真っ直ぐ敵軍に向け走り出す。
割れる人並み。
一歩、また一歩大地を蹴るたびに加速する風景。
――疾風。
よし、見えてきたぞ。
獣人系、ナイト系、魔術師系様々な敵が西門目指して突っ込んできた。
あれとそっち……あそこにもいるな。
直線からやや斜めに突撃方向を変え敵陣へ突っ込む。
暴れろよ『童子切り』
【長月】発動。
鞘から抜いた妖刀は緑色のオーラを放つ。その切っ先から橙色の剣が伸び始める。
「うぉらぁぁぁぁ!」
15mほど伸びた光の剣を横に構え、薙ぎ払った。
自分を中心に直径30m範囲の敵が全て切断され、真っ赤な液体が吹き荒れる。
宙へ逃れた一匹の獣人はその攻撃をかわしていた。
中ボス発見だ。
虎の顔をしたその敵は、両方の手首から先が長く鋭い爪になっていた。
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