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振り上げられた槍の一撃が上から降ってきた。
今までの突きとは違う攻撃。
ギリギリで半身になりながら右側へ回避する。
奴は、空を切った矛先を地面に突き刺し、それを軸にして槍の柄で薙ぎ払ってきた。
柄にも刃が!
鋭い痛みが腕に走る。
とっさに左腕を引き戻したが、左前腕部を深く切られてしまった。
流れ落ちる鮮血を右手で押さえながら、自然とこぼれる笑み。
「・・・・・・ほらな。
何度も反復練習した奴の動き。
俺様と"同じ"だ」
こんな本物の槍使いが、なんで裏切ったんだ。
「葉山ってのは、いい奴なんじゃねーのか?」
『黙れ……』
「美月ってのは凄い奴だぜ。
あの美咲がよ、変わってきたんだ。お前は……」
『うるさいっ!』
再び顔面に突きが伸びてくる。
俺は慣れた足さばきで上半身を回転させ、目の前を通過する矛先をじっと見つめた。
――見極めてやる。
引き戻る槍を右手で素早く掴む。
速さにだんだん慣れてきた。
「剣に迷いがあっちゃいけねーんだ。それは槍も"同じ"だろ?」
奴は、槍を持っている体ごと捻(ね)じり回転する。
右手で掴んでいた矛先に伝わる遠心力と振動。
つかんでいた手が弾かれ、槍を離してしまった。
槍を引き戻しながら奴は叫ぶ。
『守るべきものがあるんだ!』
叫んだ奴は、得物を振り回し中央付近でそれをピタリと止める。
まったく隙のない構え。
対する俺はグングニルを右手に持ち替え片手で構える。
「それも、俺様と"同じ"だ」
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