柚葉の一歩

4/12
前へ
/33ページ
次へ
な、なんで分かるの? 黒い短剣が降り注ぐが、霧に突入した瞬間、溶けはじめた。 ――う、嘘! 霧が薄くなり。ボタボタと溶かされた黒いオーラの塊が地面へと吸い込まれていく。 複数に同時にダメージを与えられるスキルなのに…… 首を左右に振り、頭を切り替え日下部に突っ込んだ。 マント男の武器は杖。あれなら魔王くんが切り裂いてくれる。 力強く振り上げられた剣。前回よりも長く、厚い。その周囲には邪悪な気が満ちていた。 『ん~? 駄目だよ。僕から目を離しちゃ』 走る痛み。岡ザルの一撃が背中をかすめたんだ。 爪の攻撃を蝙蝠ちゃんが防げないのは四回に一度くらい。 次は大丈夫なはず、振り返らずに前へ進むんだ。 日下部を射程範囲に捉えた左腕は、剛腕を振り下ろす。 その間に三人の部下達が割り込んできた。 ――邪魔しないで! 【斥力】発動。 魔王くんの一撃に武器ごと引き裂かれたプレイヤー。残る二人は向けた右手が吹き飛ばす。 宙に舞った二人は回転しながら城壁に激突した。 【猿舞】発動。 【ストーン・ボール】発動。 【炎球】発動。 マント男から放たれた巨大な石を炎の球で相殺。 あのサルみたいなスキルはまずい。 岡ザルの攻撃にスキルで対応しようと振り向いた。 次々と切り落とされていく蝙蝠ちゃん。 速さのあまりブレて見えるその姿は、二つ名通り"四つ手"だった。 さっきもあれにやられたんだ。
/33ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1323人が本棚に入れています
本棚に追加