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・・・・・・スキルP切れ。
弾かれた炎の球は上空へと消えていく。
『当たり前だ。そんだけ連発すりゃあ無くなるに決まってる』
目の前には、光りの楯。その横にゆっくりと歩み寄ったのは岡ザルだった。
『ん~・・・・・・大分、手こずりましたけど、腕一本には負けませんよ』
傷だらけの四ツ手は息遣いも荒く疲弊(ひへい)していた。
その二人の後方には、地に伏(ふ)した魔王くんが消えかけている。
私の為に・・・・・・
スキルPもない、魔王くんも倒れされてしまった。
私……ここで死ぬの?
『ほら、岡さっさと首を跳ねちまえっ!』
振り上がる爪を前にして、動くことすらできない。
ううん。そんなのダメ。
あのミサリンが逃げろって言ったんだ。
――私は逃げる為に、前に出る。
生きてさえいればチャンスがあるんだよね!
爪で攻撃されたら右腕で受けて、脇をすり抜けるんだ。
腕が斬り落とされたって逃げてやる!
『んー♪』
岡ザルの爪が振り下ろされた。
右手を前に出し歯を食いしばると、シュルシュルとした音が聞こえてくる。
『うあぁっ!!』
――えっ?
目に映ったのは、鮮血と共に飛んでくる岡ザルの左腕。
何の攻撃!?
腕を切り裂いたのは邪悪な剣。
倒れ消えかけていた魔王くんが、最後の力を振り絞り、鋭い得物を投げつけたんだ。
悲鳴を上げながら地面に転がる岡、その横のマント男からは焦りの表情が読み取れる。
完全に消えていく魔王くん。
・・・・・・彼も諦めていなかった。
くまさんポシェットからお菓子を全てかき出す。
あった。
取り出したのは緊急回避のBell。
最期まで抵抗するんだ。
やられる瞬間にすぐそこの城門まで移動してやり過ごす。
すぐに追いつかれるかもしれないけれど、壊れるまで何回だって逃げてやる。
そうだよね魔王くん。
必ず生きて帰って、抱きしめてあげるからね。
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