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黒鉄が解かれ、離れる二人。
『ふざけた事しやがって……』
怒りで震えるシエルは大鎌を握り締めていた。
哲二は少し下がって距離をとる。
「運営側とプレイヤーの"契約"だろ? 約束は守らないとね」
契約?
シエルを見据えたまま哲二は小さく囁(ささやいた)いた。
「シエルは運営側の人間なのは知ってるだろ? 雷斗さんから聞いたんだけど、一応このゲームは最低限のルールは守られているらしい。
シエルはしきりに誰かとの"約束"を気にしていたからね。僕との取り引きもキッチリ守らないといけない」
確かに運営側が自由に何でも設定できたらプレイヤーはたまらない。影山も最低限のルールは守るってことか。
そうでなければ、ゲームを楽しむ奴からしたら面白くないよな。
だが、納得がいかないのは暗黒の紋章だ。
小さめの斧のような刃を先端に付けたスピアを装備した男が前に出た。
『ふざけてんのはそっちだシエル。契約はどうなったんだ!』
装備や気迫からしてこの男がリーダーのはず。
どんな契約を交わしたかしらないが、恐らく哲二との契約と相反するものだろう。
シエルは無言のまま。俯(うつむ)いていたが、鎌を肩に担いで顔をあげた。
『あんっ? お前らの"契約"なら渡したぜ。死んじまったけどな』
自分でトドメを刺したんだろ。
ここぞとばかりに哲二は青い眼鏡を持ち上げた。
――まだ何かする気かっ!?
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