勇者のスキル

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【突剣】発動。 左脇からサーベルを構えた男が突進してくる。 ――速いっ! 回避不能と判断し、その剣先をグラネルで跳ねあげた。 腹部に走る痛み。 サーベルはかわしたものの、相手の肩から体ごと打ちつけられた。 上体を反らされるも、両の足に力を込めて踏み止まる。 よろけた体勢。 ――追撃がっ! 相手のサーベルが、私の喉元目掛けて伸びてきた。 上半身を捻(ひね)り、回避しようとした所へ、泉の蹴りが右から入る。 死角からの一撃だったのか、その衝撃でサーベル男は勢いよく転がった。 『お前、女のクセに無茶すんな』 「アンタこそ、男のクセにしゃべりすぎよ」 こいつとは基本的に合わないわ。 確かに勇者のスキルは認めるけれど、性格的に無理ね。 でも・・・・・・ 今のターンで一人倒したのは大きいわ。 泉は大げさなスキルを発動した割りには、倒してないじゃない。 残っているのはハンマー男、サーベル、それに防御スキルの男。 「さっきの光っていたスキルはどうなったのよ?」 『これか? まだ駄目だ。時間が経過しないと発動できなくてよ。もうちょっと待つしかない』 輝く剣を差し出した泉は、嬉しそうな笑顔を浮かべていた。 「そんな使えないスキル、発動してんじゃないわよ!」 ちょっとでも期待した私が馬鹿だったわ。 『なっ!? お前この威力知らねーだろ!』 口論していると、後方の魔術師から殺気が漏れてきた。 【氷槍】発動。 足元から幾本もの氷の柱が飛び出す。 柚葉の半分にも満たないわ。 次々と出現した氷の柱を軽々とかわし、剣を構えた。
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