535人が本棚に入れています
本棚に追加
ブレる切っ先を予測し、ぎりぎりで右に回避する。
戻す槍に狙いをつけて、跳ね上げた。
カーンという甲高い音。
跳ねあげた勢いを上へと反らしながら下から柄で突きを放つ。
『お前……』
柄の先端は、チェンの顔寸前で止まっていた。
「槍もコツ掴んじまえば楽勝だな」
胸の辺りに何かが当たっている。
「げっ!! いつのまに……」
よくみるとそれはチェンの左手に握られた槍。
跳ね上げたはずじゃねーか。
『何が楽勝だ。まだまだじゃねーか』
クソッ、やっと一本取れたと思ったのによ。
最近、俺様がチェンに稽古をつけてやっている。
まだ一本も取れねーのが悔しいけどよ。
「お前、何で葉山雷斗の所に戻らねーんだ?」
チェンは一緒に来ないかと誘われたらしいが断ったそうだ。
裏切ったことを気にしているのか?
『戻るさ。だけどお前に教えることがあるからな。それが終わったら戻るつもりだ』
「俺様が学ぶことなんかねー! 早く戻ってやればいいじゃねーかよ」
迷いのない顔でチェンは答えた。
『――ケジメだ。男には色々あるんだ。お前もそうだろ?』
けっ、語りやがって。
最初のコメントを投稿しよう!