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≪制限時間残り三分≫
水っていうだけじゃ、何の手がかりにもならない。
でも、水……どこかで聞いたような。
「適当に入力してみようか? 銀行だってニ回は失敗しても平気だし。このままじゃね」
大胆というか、無謀というか、どんな罠が待ち受けているか分からないのに、緊張感が少ないんじゃないか?
『それがいいでしょう。暗号だけに……暗号……えーと』
もっと緊張感のない人がいる。
ダジャレが思い付かないのなら言わなきゃいいのに。
そんなアーツに構うことなく、結月はすらりとした細い指をボタンにかけた。
「いくよ。"7777777"」
(そんなわけないだろっ!)
思わず声を出して突っこんでしまったが、聞こえるはずはない。
≪認証エラー。正しい数字は一つです≫
えっ……!?
間違ってはいたが、正解個数を教えてくれたぞ。これなら素早く順番に入力して数字は判明する。
残り時間は少ないがなんとかなりそうだ。
そうだよな。手掛かり無しの仕掛けなどあるわけがない。これは"機転を利かす"ことが出来るか試しているんじゃないか。
『次は私が……』
横からぬっと伸びたアーツの指は8のボタンを連打し始めた。
≪認証エラー。正しい数字は二つです。入力失敗。罠が発動致します≫
もう罠かよ……オレの考えは甘かったようだ。
『少し下がりましょう』
罠というワードに警戒したアーツは結月を後ろに下げた。
――危ないっ!
入口の扉の方から光の球が放たれた。
真っ直ぐアーツへと向かう。ボタンを警戒し入口に背を向けている為、気が付いていない。
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