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それは、オレの杞憂(きゆう)だった。
衝突寸前でアーツは体をひるがえし、光の球を回避。
殺気も何も感じなかったのに、どうしてかわせたんだ。
すり抜けた球は、カーブを描きながら再び二人を標的に戻ってくる。
「追尾機能もあるみたい!」
『触れるのは危険です。念の為、直接攻撃も止めておきましょう』
【ファイヤー・アロー】発動。
弓を構えたアーツは球へ向けて矢を連発。その内の数本には炎が灯っている。
次々に球の芯をとらえるも、矢の全てがすり抜けた。
『物理攻撃も、スキル攻撃もどちらも駄目ですね』
「早く扉を開ける方法を探さないと」
光の球のスピードは速いが、この二人であれば余裕で回避できる速度。
ただ、脱出する方法がわからない。
『では、聞いてみましょうか』
だ、誰に聞くっていうんだ。まさかまたダジャレ?
【白羽(しらは)】発動。
矢を抜かずに構えたアーツの弓には白いオーラで出来た矢が。それを何もない部屋の左隅へ向け放った。
白線を描くような軌道。
バチバチッという電気がほとばしる音が聞こえた。
――目を凝らさないと見えない程の薄さで何かが見える始める。
『この白羽の矢は見えないものを撃ち抜きます。もうすぐ敵の姿が拝(おが)めますよ』
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