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突如現れた異変に、結月は素早く反応していた。
ステップインしながら、青白く輝いたグラネルを振り下ろす。
ガシーンッという重低音と振動。打ち付ける度にだんだんと色がはっきりしてきた。
現れた輪郭は楕円形。
ドームの中にいたのは黒いスーツ姿の男。手には青い水晶がはめ込まれた杖を持っている。
『よく分かったなアーツ』
――運営だ。
即座にそう理解した。スーツもそうだがシエルの雰囲気と似ている。
一歩下がった結月は、薄気味悪い笑みを浮かべている男をキッと睨みつけた。
「あなた、GM(ゲームマスター)でしょ? 早くこの球の罠を解いて」
『こんな罠仕掛けられたら、球だけにタマらないですね』
本気なのか、馬鹿にしているのか、アーツは結月に続いてGMにダジャレを飛ばしている。
『ふざけたこと言ってんじゃねぇよ。余裕ぶりやがって……お前達は俺に試されて死ぬんだ』
「物騒なこと言わないで。貴方達、最近ちょっとしつこいわよ」
結月の話からすると、何度もGMに奇襲されているということか。
問い掛けには答えず、左手を上にあげたGMは、スキルを発動。
【召喚】発動。
天井から赤いオーラがボタボタと落ちてくる。そのオーラがぶよぶよとしたアメーバ状に変化した。
『このレッドスライムには物理攻撃が効かない。せいぜい頑張るんだな』
アーツはオーラが形成される前から矢を撃ってはいたが、刺さるだけでスライムがダメージを受けている気配はない。
『結月さん、グラネルはどうですかね』
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