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【乱れ撃ち】発動。
結月に背を向けたアーツは、矢を放ちながらその周りを回っている。
360°全方向に撃ち出された矢は、にじり寄るスライムをことごとく吹き飛ばす。
倒すことは出来ないけれど、矢の勢いで距離を遠ざけることはできるんだ。
『時間を稼ぎます。さぁ、光の球に気をつけながら、思い出して下さい。私との楽しい日々を!』
結月の想いが回復する時間を作ったんだ。
困惑の色を浮かべる結月。
「そ、そうね……」
緑色の瞳を隠すように瞼(まぶた)を閉じ、グラネルに想いを込めた。
しかし、
剣を取り巻くオーラは全然増えていない。
アーツはその姿を喜びと、悲しみが混ざったような眼差(まなざ)しで見つめていた。
立て続けに召喚スキルを発動しているGMに疲れの色はみえない。
『時間なんか稼いだって無駄だ。この程度の召喚なら何度でもできる』
『――素敵な時間なんです。少し黙っていて下さい』
静かではあるが気迫の乗った凛とした声。
もしかして……アーツって結月のことが好きなのか?
オレは恋愛に関しては疎(うと)いというか、経験なんかないけれど横で見ていれば、わかる。
小さくなったグラネルの光を見ながらアーツは言った。
『駄目ですか。そうですねぇ……じゃあ、雷斗さんなんてどうですか?』
その言葉を聞いた結月は頬を赤らめ、慌てふためいた。
「――なっ!! ら、雷斗は今、関係ないじゃない」
グラネルの光は少しだけ輝きを増す。
『今頃、我々と同じように罠に掛っているかもしれませんよ』
「あの二人は、大丈夫。信じているわ」
神剣の刀身が伸びていく。やっぱり結月さんの"想い"は雷斗さんにあるような気がする。
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