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雷斗さんは、得体の知れないオーラで出来たドームから距離を取った。
そのすぐ後ろには苦しそうな表情のアーツが。
『き、狂戦士になってしまったら無差別に……攻撃を開始するようですが、レベルが1にもなる……よ、ようなので、さほど問題は無いはずです。
い、今は左手の感覚がありません。弓も離せない……です』
緑色のラインは額にまで上がってきていた。
「それは違うみたいっ! レベルはカウントダウンのようにゆっくり下がっていくから……危険よ。
――あっ!?
な、何、あれ…………」
魔法陣は闇に包まれて中の様子がわからない。探索能力にすぐれている結月だけが、何かを察知しているようだ。
それにしても、結月はなぜ急に呪いに関しての詳細がわかったんだ? 探索能力とは関係がないだろ……。
『駄目です。俺には結月さんを守る使命があるんです。彼女を残して転位なんかできません』
凍夜は、自分も同行しなくてはならない転位スキルを拒否した。
どこか別の部屋に転位させることも出来るが、そうなるとアーツが危険になる。
「何いってんだよ。アーツに結月が殺されてしまうぞ」
『それは、俺が……命にかえても守る』
――バシッ!!
振り向いた結月が、凍夜に平手打ちを……。
「命を粗末にするんじゃないっ! 凍夜くんは姉さんに命を救われたんでしょ? だったら大事にしなきゃダメ!」
『しょ、召喚が……完成しそうですよ』
アーツは話すことも苦しそうになっている。いつ呪いが発動してもおかしくない状態だ。
『…………。』
唇を血が出るほど噛み締めた凍夜は、左手にオーラを集めた。
【チーム・ターゲット】発動。
『……分かりました。このスキルは留めておきますので、ベルの効果が切れたら……発動させます』
これ程まで、美月さんとの約束を第一に考えていたんだ。
もしかして、三年後もこの約束を守る為に……。
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