620人が本棚に入れています
本棚に追加
赤い装備は所々損傷し、トレードマークの三角帽子は無くなっていた。
その姿が激しい戦いを物語っている。
でも……
視力と肺機能を無くし、片手、片足の自由を奪われた絶望的な状況でもGM三人を相手にシャークは勝ったんだ。
ルークは"絶望"しかないと言っていたが、違う。
三年後の世界で、この人達は圧倒的存在感で活躍しているんだ。
オレだって体験した。
諦めなければ、想いは叶う。
若き日のホープメンバーも同様に、誰も諦めてなどいない。
『シャークお前がなぜ……』
現れるはずのない男の登場に動揺したルークを、シャークは無視し凍夜のもとへ歩き出した。
凍夜は、状況を簡潔に説明する。
『シャークさん、聞いて下さい。敵は召喚されたデスナイトと目の前のGMです。
アーツさんは数秒で狂戦士に……。転位させたいのですが、転位封じのアイテムで、数分間は発動できません』
『……デスナイト……面白そうですね』
首飾りを残し、赤いマントと鎧を脱ぎ棄てたシャークの肉体は、細身の見た目とは違い発達した筋肉で覆われていた。
右手に握られた杖にオーラが集まっていく。
"知識"の広間から出たので、奪われた各機能は戻っている。
【縛植(ばくしょく)】発動。
オレ達に使った捕縛用のスキルだ。
【卯月】発動。
雷斗さんが、その上からさらにスキルを被せた。
苦しそうに膝をつくアーツの体を植物のツタが何重にも巻きついていく。さらに、その周囲を橙色の球がアーツの体を固定した。
『……本気のアーツさんとも戦れたら面白そうですね』
シャークが言うと冗談には聞こえない。しかし、これで少しの間はアーツの行動を抑えられる。
デスナイトとシャーク。
ルークには、三人掛かりで挑める。
GMが用意した卑劣な戦いに、大きな"希望"が見えてきた。
最初のコメントを投稿しよう!