最終の間

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赤い装備は所々損傷し、トレードマークの三角帽子は無くなっていた。 その姿が激しい戦いを物語っている。 でも…… 視力と肺機能を無くし、片手、片足の自由を奪われた絶望的な状況でもGM三人を相手にシャークは勝ったんだ。 ルークは"絶望"しかないと言っていたが、違う。 三年後の世界で、この人達は圧倒的存在感で活躍しているんだ。 オレだって体験した。 諦めなければ、想いは叶う。 若き日のホープメンバーも同様に、誰も諦めてなどいない。 『シャークお前がなぜ……』 現れるはずのない男の登場に動揺したルークを、シャークは無視し凍夜のもとへ歩き出した。 凍夜は、状況を簡潔に説明する。 『シャークさん、聞いて下さい。敵は召喚されたデスナイトと目の前のGMです。 アーツさんは数秒で狂戦士に……。転位させたいのですが、転位封じのアイテムで、数分間は発動できません』 『……デスナイト……面白そうですね』 首飾りを残し、赤いマントと鎧を脱ぎ棄てたシャークの肉体は、細身の見た目とは違い発達した筋肉で覆われていた。 右手に握られた杖にオーラが集まっていく。 "知識"の広間から出たので、奪われた各機能は戻っている。 【縛植(ばくしょく)】発動。 オレ達に使った捕縛用のスキルだ。 【卯月】発動。 雷斗さんが、その上からさらにスキルを被せた。 苦しそうに膝をつくアーツの体を植物のツタが何重にも巻きついていく。さらに、その周囲を橙色の球がアーツの体を固定した。 『……本気のアーツさんとも戦れたら面白そうですね』 シャークが言うと冗談には聞こえない。しかし、これで少しの間はアーツの行動を抑えられる。 デスナイトとシャーク。 ルークには、三人掛かりで挑める。 GMが用意した卑劣な戦いに、大きな"希望"が見えてきた。
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