ホープ Vs ディスペアー

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無謀にも力強く刀を握り締めた雷斗さんが、ルークの前に出た。 怒りで熱くなっているのか!?  「――なんだ、お前        間違ってるぞ」 怒り、興奮していた雷斗さんだったが、ルークの言葉を聞いて逆に冷静さを取り戻していた。 『……美しい仲間愛ですね』 意味が分からないルークは、精一杯皮肉を込めた言葉を投げかける。 「リーダーの素質がない奴の元へ、シャークやアーツが集まる訳ねーだろ。なっ、結月!」 人は事実とは大きく離れた言葉に怒りを覚えない。雷斗さんは、心から彼女にリーダーの素質があると認めているんだ。 回復の終わった凍夜は、眼鏡に手を掛けていた。 『俺が今、命を懸けられるのは結月さんだ』 この言葉がハッタリでないことをオレは知っている。自分が一度決めたら己の命も捨てれる男だ。 明晰(めいせき)の炎剣。 その二つ名通り、冷静沈着なイメージが強かったが、違う。 心に燃える炎は、誰よりも熱く強いんだ。 結月が冗談でアーツに言っていた"武士道"の精神を、この凍夜は持っているような気がした。 『そうですか。では、最後に残っていたほうが正しいということにしましょう』 渦中の人物が口を開く。 「ちょっと待って、ルーク。 アナタ、もしかして………… 相当、焦っているでしょ? ずっと、アナタを観察していたからよくわかるわ。 ――それもそうよね。 仲間が全員いなくなって、アーツの呪いも不発、おまけに恐れていたシャークがここに来て、他に手が無いんじゃない?」 ルークの持つ剣に黒いオーラがあふれ出す。 より一層、輝いた深緑の瞳はそれも見逃さなかった。 「――図星ね。オーラが漏(も)れちゃってるわ。 雷斗、凍夜くん。 相手はビビってるみたい。二人ともいける?」 洞察力だ……。 それも人の心を見抜く洞察力。オレも彼女をずっと観ていて感じていた。 アーツさんが結月を慕う気持ちがわかる。 それに、美月さんに頼まれたと凍夜は言っていたが実際は違う、それは建前で本心から命を懸けたいと思っているんだ。 この中では明らかに戦闘力の劣る結月だが、人を惹きつけるカリスマ性と仲間を鼓舞する力がある。 シャークは……ちょっと分からないが。
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