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炎の柱を転がって回避した雷斗さんは、起き上がると同時に大地を蹴った。
「足掻(あが)いてんじゃねーよ」
勝負を決する為に、刀を振り上げながら加速する。それに合わせ、凍夜も走り出した。
もう一度、三人の力を合わせればルークに勝てる。
「――待ってっ!」
敵とは真逆を向いた結月だけが、その場を動かない。
その視線の先には、炎に包まれたアーツの姿が……。
まずいぞ。ルークはこの為にスキルを発動したのか。
アーツ自身は蒼いオーラで身を守っているようなので問題なさそうだが、あの炎の勢いでは簡単にツルが切れてしまう。
すでに雷斗さんが発動した卯月の球は、溶け始めていた。
『結局、お前らには"絶望"しかねーんだよっ!』
品の欠片もなくなったルークは、地面から剣を抜いて雷斗さんに立ち向かう。
ルークを攻撃するべきか、アーツを抑え込むべきか迷っていた結月が結論を出す。
「凍夜くん――転位スキルを発動して!」
血がにじむ程刀を握り締めた凍夜は、その場を動かず結月を真っ直ぐみつめていた。
「凍夜……くん?」
『絶対に、死なないと約束して下さい』
主君を最後まで守り切れなかったという無念なのか、その表情に悔しさを滲ませていた。
「――大丈夫よ、信じて……」
それを聞いた凍夜は、コクリと頷(うなず)き左手に留めていたスキルを解放した。
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