ホープ Vs ディスペアー

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蒼いオーラがアーツの足元を取り巻いている。 『アーツさん、抵抗しないでください! 意識をしっかり!』 無意識に、オーラから逃れようと抵抗するアーツ。 呪いと戦っているのだろうか、時折うめき声をあげながら体を激しく揺さぶっていた。 【愛染明王】発動。 ――なっ!!!! まだこれが発動出来るのかよ。 レベルのカウントダウンペースは、かなり遅いってことだ。 巨大な像があっという間に形成されていく。その足元のアーツは……。 弓を引き、既に攻撃のモーションに入っている! しかも、狙いは結月だ。 「――やめて! アーツ お願い、負けないでっ!」 凍夜はアーツにしがみつくがビクともしない。 『アーツさん、あと数秒で転位が開始しますから!』 駄目だ、数秒もあればレーザーが放たれてしまう。 『……ぐ……がが……』 苦しそうに声をあげるアーツ。何か言おうとしている?    「アーツゥゥゥ!」 結月の悲痛な叫び声は届いているのだろうか。 アーツの金色に輝く長い髪が、オーラの風圧で舞い上がる。 弓の軌道がゆっくりと上へ……。 自分の意思で、狙いを変えているんだ。 呪いには負けないというアーツの意思が伝わってくる。 それが伝わったのか、結月は小さく微笑んだ。 ルークと戦闘中の雷斗さんも、距離を取りアーツに声をかける。 「呪いなんか吹き飛ばせよっ!」 眉間に皺(しわ)をよせながら、弓を最大にまで引いたアーツは、声を発した。 『………が……ぐっ……ぐ…… ――……      雷斗っ――!!!!』 その直後、天井に向け巨像からレーザー光線が発射された。 たった一言、名前を呼んだだけ。 しかし、そこには万感の想いが込められていた。 きっと雷斗さんへ向けた"結月を頼む"というメッセージ。 その言葉を最後に、凍夜とアーツは蒼いオーラに包まれて転位していった。
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