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凍夜とアーツの無念が自分のことのように感じ、心が痛い。
結月を守れなかったという思いは二人とも同じ。
それに……凍夜は、本当に美月さんとの約束の為だけに、結月を守っていたのだろうか。
アーツと同じように、凍夜も結月を愛していたんじゃないか。
このミッションをずっと観てきたオレは、そんな気がしてならなかった。
「俺達で奴を倒すんだ――」
雷斗さんとルークは、間合いを取り対峙している。
魔法陣が消えていくのを確認した結月は、再び武器を構えた。
『これで五分五分。左腕を失った私、仲間を二人も失ったお前ら。どっちが正しいか決めなくては……』
有利な状況になった為か、ルークは落ち着きを取り戻しつつあった。
二対一。数的に有利ではあるが……実力差が。
さっきまでの戦いを考察すると、例え左腕が一本なくてもルークに分がある。
せめて雷斗さんが、オレの知っている時代の強さだったら……。
「ねぇ、雷斗。
こういう時は、少し肩の力を抜かないと駄目よね」
突然、結月は独り言のように話し出した。
ルークを見据えたまま、雷斗さんは振り向かず答える。
「今は集中しろ」
気にもせず結月は続けた。
「雷斗の型にはまらない戦い方、私は好きだったなぁ」
型にはまらない?
オレの時代で見た雷斗さんの戦い方は独特。
刀を横に構え、徒手空拳を織り交ぜたもので今よりも粗い感じだ。
そのことを結月は言いたいのだろうか?
「あれは、我流(がりゅう)だ。こんな大事な場面で使えるかよ」
『いきますよ……』
右手に持つ黒い剣を振り上げ、ルークは雷斗さんへと斬りかかった。
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