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シャークはどうしたんだ。
目を向けるといつの間にか轟音は消え、黒い靄(もや)の中に二人は包まれていた。
ここからでは状況がわからないが、まだ倒してはいないようだ。
早く……。祈るような気持ちで黒い靄を見つめているとルークの声が。
『往生際の悪い人達ですね。いくら頑張っても、クリアなど出来ないと言っているでしょう』
雷斗さんは明らかに体力を消耗している。左大腿部と胸元、右脇腹からは出血が。
「くそっ。やっぱ駄目か。これじゃあ、埒(らち)が明かねー。
…………。
――仕方ねーか。
ちょっと結月、耳貸せ」
ルークに聞こえないよう雷斗さんは、結月の耳元で何かを囁(ささや)いた。
「そんなの無理よ……。
私には無理っ!」
雷斗さんを突き飛ばすようにして離れた結月は、固い表情で拒否した。
「俺は、諦めねー」
刀を握る手に力を込めた雷斗さんは、ルークへと向かっていく。
「待ってよ、雷斗!」
――あの構えは!
右手を横に広げ、大きいスタンスで構える独特のスタイル。
両足には橙色のオーラが纏(まと)わりついていた。
『いいでしょう。一思いに殺してあげますよ』
【ロボット・アーム】発動。
ルークの左肘から先に機械の腕が出現した。
腕を失ったとか言いながら、あいつ……こんなスキルを隠し持ってたんだ。
それにしても、雷斗さんは結月に何を言ったのだろう。
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