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「昨晩は監視システムが気になって蓮には発言を控えたんだけれど、影山が不正は不問にするといっていたらしいから、話しても大丈夫かな」
哲二はオレに断言していた。クリアアイテムはこの世界にあると。
「哲二はアイテムの場所まで知っているって言っていたけれど・・・・・・」
「な、何ですって!?」
美咲が驚くのも無理はない。一体どこからそんな情報を……。
「佐伯が持ってるやつだよ」
――佐伯が!?
佐伯は今、龍の楯作成に必要なアイテムを作成している最中だ。何段階もの加工をしなくてはならないらしく、朝早くから籠って頑張っている。
あ……龍の楯!!
「鍛冶屋のハンマーかっ!」
「龍王の逆鱗かっ!」
「龍王の逆鱗ねっ!」
三人が同時に閃(ひらめ)いた。一人ハズしているのはもちろん修司。
「蓮と美咲さん正解。修司……外で稽古してきたらどうかな?」
苦虫(にがむし)を噛み潰したような顔をしながら修司は着席した。
「わかったわっ! ルークが持ち出したアイテムが龍王の逆鱗で、それを柚葉のお父様が……」
全員が一斉に柚葉の方を向くと、きょとんとした顔でミカンを食べていた。
「おほーはん、もはへへふへはんはね(お父さん、持たせてくれたんだね)」
オレ達は最近、柚葉が口に何かを入れて喋っていても理解出来るようになっていた。
・・・・・・そうか。
ゲーム外に持ち出されたアイテムを、柚葉のお父さんが再びゲーム内に持ち込んだんだ。
それを初期アイテムとして柚葉に。
それにしても柚葉はまだ言わないつもりか?
忘れてる、なんて事はいくら何でもないよな。
もしゃもしゃ食べる姿をみると、何も考えていないとしか思えない。
これは演技なのか?
こうなったら、オレから言うしか――あっ、駄目だ。監視システムに発見される。
影山が不問にするといったのは、職業選択の際に柚葉に有利になるようにした事や初期アイテムの事だろう。
その後カルミナ村で渡された何かは別の不正だ。
だから柚葉も同じように監視システムを懸念して口を閉ざしているのか、とも考えたがそれは違う。
なぜなら監視システムの件を知ったのは昨日だからだ。
きっとオレ達に言えない別の事情があるんだ。
柚葉を信じるしかない。
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