逃亡者

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元オレンジライフの総隊長がなんで、こんな場所に。 っつうことは、残りの二人は団とパトリシアか。 道理で、強いわけだ。 鍔迫り合い(つばぜりあい)で触れ合う刀に俺の獲物が呼応する。 この業物(わざもの)……確か、天下五剣の"童子切り"だったか。 力比べの最中だったが、葉山は力をいなし蹴りを放ってきた。 ――うぉっと、危ねぇな。 バックステップし再び赤く光る刀を構えると、葉山の横には二人の"元"隊長が立っていた。 くそったれ、三対一かよ。 今のスキルPの残量を考えると、よくて相討ち最悪命はないな……。 ――とんだ厄日だぜ。 「おい、お前、葉山雷斗だろ? いつからプレイヤーキラーに成り下がったんだ?」 こいつの性格は、十分知っている。無駄な争いをしている場合じゃねぇ。交渉で揺さぶりをかけるか。 『――はっ? 何いってんだ。お前はプレイヤーなんかじゃねーだろ。――運営さんよ』 思った通り、話の通じる相手で助かった。 「俺がいつお前らに敵意を示したんだ」 三人の中でも一番短気なパトリシアが前に出て、レイピアを振り上げる。 『テメェ、オロすぞコラァ! 運営っつったら敵だろ、コラァ!』 ヒラヒラした格好とは対照的に、噂通りのヤンキーだな、こいつは。 『パト、ちょっと待て』 『えっ、だってコイツは……あっ! もしかして、雷斗ヤキモチ妬いてる?』 急にくねくねと体をよじるパトリシアは葉山の腕にしがみついた。 今、逃げれるんじゃねぇか? 『それで、なぜ運営がここにいる』 下手に動いたら、警戒を怠らない団のスキルに捕まっちまうか。 まぁ、それでも――動くんだけどな。 「取引きだ。それで見逃せ、お互い無駄な血は流したくねぇだろ?」 足の裏にオーラを集中。地中へと膨れ上がるこのオーラは外からは見えない。 『俺は取引きはしねー』 「その取引きじゃねぇ。まぁいい、情報を教えてやる。聞いて損はねぇよ――」 ある重要な情報を俺は葉山に話した。
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