ハムラビの塔①

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【空蝉(うつせみ)】発動。 正面の忍者に二度ほど斬られながら、その脇をすり抜けアルトへと走る。 「こっちだぁぁぁ!!」 一歩一歩加速するたびにアルトへと向かう忍者達の背中に追いついていく。 しかし、忍者はアルトの目の前まで到達し刀を振り上げた。 やばい、斬られるっ! オレは咄嗟に鬼丸を投げつけた。 ――ザクッ!! 背中に命中し、心臓の裏側部分に鬼丸は突き刺さり忍者は倒れこんだ。 もう一体の敵は武器のないオレにターゲットを移したようで振り向いてきた。 さらに後ろからはもう一体の忍者がオレに追いついた。 やばい、武器が……。 そう思った時、冷たい風が流れ込んできた。 【樹氷(じゅひょう)】発動。 後方の忍者の下方から氷を含んだ突風が上方へと吹き抜け、一瞬で凍りついた。 健太郎のスキルだ。 これで一対一。 最後の敵が繰り出した右からの一撃を回避しながら、左手の日本刀の柄を蹴りあげる。 低い姿勢から忍者は突きを放ってきたので、横に転がり回避。 すぐさま落ちている短めの日本刀を拾い構えた。 攻撃に転じようとしたその時、 ――ザシュッッ!! 忍者の胸元から突き出たのは青白く輝くグラネルの切っ先だった。 三人いた忍者達を倒した美咲が駆け付けていたんだ。 「た、助かったよ美咲」 「アンタ鬼丸投げるなんて、何考えているのよっ!」 うわっ、怒ってる……。 「ま、まぁ、アンタだから仕方ないわ……」 あら、いつもなら怒涛(どとう)の説教が始まるけれど今日は違う。 変なもんでも喰ったかな。
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