ブラーノスの依頼

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=============== 視点 西条 美咲 =============== 私は一枚のチケットを破ってジープを出現させた。 もうすぐイベントが開始される。 過去の経験から、こういったイベントは開始早々プレイヤー同士が戦い始める事になる、とアーツが教えてくれたので先に移動することになった。 哲二達と別々の場所で焦ったが、火山を目指しながら敵を倒せばそこそこPが稼げるし、合流もできるわ。 見上げるように私を覗き込んでるアルトが口を開いた。 『お姉様、車は誰が運転するっぺした?』 前回のイベントで乗り物の運転には懲りている。だからといって修司の運転なんか絶対に嫌。 「アルト頼んでもいい?」 『ぬらめっさ無理っぺした! オラ耕運機すら乗れねぇんだ』 「耕運機とか……」 私だって乗れないわよ。 『私が運転しましょう』 私の手から鍵を取ったアーツはすすんで運転席に座った。 修司とアルトが後ろの座席に乗り込み、私は助手席に座る。 『それでは出発します』 ≪ブラーノスの依頼イベントを開始しました≫ スタートの合図が掛かった瞬間、プレイヤーの輪の中から強烈な光が放たれた。 光の中心にいる人物は剣を振り上げポーズを決めている。 ――い、泉!? あれは泉だわ。そしてあの光は……泉スパ……いえ、ホーリー・オーラという勇者最大のスキル攻撃。 まさか、アイツ……ここであれをぶっ放すつもり!? 「アーツさん、早く!」 『えぇ、分かってます。あれはまずいです』 アーツが車を急発進させると同時に泉が何かを叫んだ。 叫んだ内容は聞こえなくてもわかるわ……。 その直後、太いレーザー光線が大地をえぐりながらプレイヤー達に撃ちこまれた。 前に見たときよりも各段に破壊力が増している。 Aランクプレイヤーを今の一撃であれだけ一気に倒したのなら相当なPを稼いだはず。 あの馬鹿勇者にだけは負けたくないわね。
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