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「哲二、ここから逃げる方法って……」
「無理だね」
即答かよ。
ざっとみて50人以上のプレイヤーに取り囲まれている。
バトルロイヤルだったら最初に強い奴を叩くのが定石。
オレ達は目立ち過ぎて、強いと思われている。
最初から狙われていたってわけか。
「武も健太郎もまだ動くな。オレが斬り込んで囲いを崩すから、隙間が出来たらそこから逃げるんだ」
オレが鬼丸に手をかけオーラを集めると、どこからともなく風が吹いてきた。
穏やかな風が一気に強風へと変わる。
な、何だ……スキル攻撃か!?
囲いの一角が強風で乱れていく。
その崩れた陣形の先には二人のプレイヤーが。
パトリシアさん?
『大勢で弱いものいじめしてんじゃねーぞ。殺すぞコラッ!』
パトリシアさんが手にするレイピアを動かすたびに風向きが変わり、薙ぎ倒されていくプレイヤー達。
しかし元オレンジライフの隊長にすら数十人が刃向かっていく。
この隙に逃げ出そうとしたが、強風が俺たちにも浴びせられうまく動けない。
薙ぎ倒されたプレイヤーに団隊長が岩のようなスキルを次々と発動しトドメを刺す。
よ、容赦ないな。
風を激しく操っているパトさんが叫ぶ。
『ほら、行けよっ!』
「すいません、助かりました!」
『仕方ねーだろ、彼氏に頼まれたからな。助けるのはこれっきりだぞ』
か、彼氏がいるんだ……。
突進攻撃で移動する際に団隊長が何かを呟いた。
『…………違う……。』
『団、今何か言ったか?』
この人しゃべるの!?
風を自分自身の周囲に集めたパト隊長は、再びプレイヤー達の中へと突っこんでいく。
もちろんプレイヤー達のターゲットは俺達と二人の元隊長。
「パトリシアさんに甘えて、今のうちに車でここを離れよう」
哲二がチケットを破ると軽トラックが出現。
「武が運転できるみたいだから僕達は荷台に乗るよ」
「大丈夫なのか、武」
渡された車のキーをクルクルと回して武は得意そうだった。
『トラクターで鍛えた腕があるっぺしたよ』
トラクター……なんか不安だ。
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