592人が本棚に入れています
本棚に追加
===============
視点 佐藤 哲二
===============
古代の庭から蓮が帰還して12日が経つ。
運営襲撃まであと二日。
スパイ容疑をかけられ命からがら帰還したムッキー。
柚葉さんの顔が描かれたタオルなんて持っていくから……。
踏み絵のような真似事をさせられて難を逃れたらしい。帰ってきてからずっと泣いている。
その甲斐あってか、襲撃の日時が分かったのは大きい。
広がる草原。その奥には森が続いていた。
僕は東門の城壁から長閑(のどかな)な大地を眺め考えを巡らせている。
奇(く)しくも黒竜イベントと同じような展開になりそうだ。
攻めてくる運営サイド、それを籠城して守るプレイヤー。
あの時の教訓を活かして罠を用意した。
ただの籠城ではない、攻撃的な籠城。
でも、どんなに策を講じたって最終的には"人間力"が勝負を決める。
僕の役割は少しでも多くの運営を削る事と非戦闘要員を守る事。
"人間力"なら、揃っているから。
街を囲うように守る壁の上には多数の大砲が設置され、壁の下を見下ろすと地面には細い溝が網目の様に張り巡らされている。
時間の無い中複数の罠を仕掛ける事ができた。
後は各門に配置する人員を決めなくては。
雷斗さんはハムラビの塔に登り続けているらしく連絡が取れ無い。
シャークさんにも戦ってもらえるよう何度も頼みにいったが断られた。
しかし、僕もただで帰るわけにはいかない。
交渉の末、赤龍ガルストームを借りることが出来た。
街の上空を守るよう命令してくれるそうだ。
さらに特注で作った鋼鉄の門を実験として、シャークさんに自身の最大スキルで攻撃してもらったが破壊されることは無かった。
これで門の安全性は証明されたということだ。
それと、団隊長と何人かのプレイヤーには別件でハムラビの塔に登ってもらっている。
そうすると残りのメンバーで配置を考えなくてはならない。
最初のコメントを投稿しよう!