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アジトに戻ると、うつ伏せの状態で佐伯に馬乗りにされお尻を揉みほぐされている蓮がいた。
もちろん非戦闘員の佐伯が力で蓮に敵う筈が無い。修司が押さえつけているんだ。
「ちょ、佐伯、待った、待ったっ! 修司離せよっ!!」
「時間とケツは待ってくれねーんだよっ!」
意味不明な格言を言う修司、佐伯はもっと理解不能なセリフを叫んでいる。
『――丁度いいっ!! すっごい丁度いいよっ!』
何が丁度いいんだろう。
僕はその場を通り過ごし椅子に座った。
テーブルには豪華な料理が並べられている。今日は何のモンスターなのか不安だ。
「哲二ぃぃぃ!! 頼むよっ!」
「アンタ達、いい加減に馬鹿な事やめなさいっ!」
美咲さんに怒鳴られた佐伯と修司は、蓮を解放し席についた。
「哲二くん、お疲れ様。もう出来たから、飲み物ついじゃってくれるかな」
いつもの黒いローブではなく、パンダの顔が大きく描かれたエプロンを身に付けた柚葉さんが大皿を運んできた。
『すごーい。柚葉ちゃん、いつでもお嫁にいけるね!』
佐伯も交えて六人での食事は久しぶりだ。
蓮と修司は朝から猛特訓を重ねていたのでお腹が空いていたのだろう、会話もせずに料理を口に運んでいた。
美咲さんも、華奢な体型なのによく食べる。
「哲二くん、食べないの?」
「ん、ああ。食べるよ。
その前に……。
皆、食べながらでいいからちょっと聞いてくれるかな。
もう準備はしたんだけど、明日は決戦前の前夜祭をしようと思う」
「前夜祭って何よ?」
『あら、素敵じゃなーい』
前夜祭の目的を話そうと思っていたけれど……。
修司はどうせ聞いていないから別として、蓮と美咲さんは顔に出るからな。
「明後日は、僕達と運営の戦争になる。こちら側だけ被害0というのはあり得ないよ。
中には死んでしまうプレイヤーもいるだろう。もちろん、救出できるよう三人一組が基本だけどね」
本当の目的は伏せる事にした。
フォークを置いた蓮が僕を見る。
「最後の晩餐ってこと?」
「それだけじゃない。全員の目的を一つにして士気を上げる目的もあるから」
「そんな暇があるなら最後まで何か出来る事があるんじゃないの?」
その後、反対する蓮と美咲さんをなんとか説得し事無きを得た。
それよりも自分の口から出た言葉に不安が高まる。
――被害0はあり得ない。
僕の本心だ。
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