兵法三十六計③

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――リーン、リーン…… 緊急回避のベルから澄んだ音が鳴り響く。 フィールドに出さえすればこのアイテムの効果で街に戻れるんだ。 危なかった……。 この程度の爆弾ならジュエルが防げることは分かっていた。 問題はそこではない。 僕に必要性を感じてもらえるかどうか。 だから僕は彼女にとって必要な人間になったんだ。 自信はあったけれど、相手は理屈の通じない相手。 ぎりぎりだったな。 「やはり、時間切れでしたね。次回必ずレクチャーしますので、お楽しみに」 『爆発、危なかったね……Final lesson楽しみにしているよ』 僕の作戦にはめられた事を十分理解しているのにジュエルは冷静だった。 ただの強がりか? それとも……。 『……不思議かい? ボクがキミを簡単に諦めたから』 そう言って、ジュエルは僕の胸に手を当てた。 【呪齢(じゅれい)】発動。 ――スキル攻撃!? でも、どこにも痛みはない。 『契約には証文が必要だよね』 ジュエルの狂気に満ちた笑みを最後に、視界が暗くなっていった。 ――転送が、始まる。 目を開けると、巨大な門の前。 僕は何門かを確認するよりも先に、シャツのボタンを外しジュエルに当てられた部分を確認した。 【二八七九】 刻印された漢数字が一つ減る。 時間、いや、分か。 2880分を60で割ったら48時間。 まぁ、十中八九呪いだろうな。 48時間以内にジュエルを倒さなくては僕は呪いを受ける。 どういったものか分からないけれど、彼女の実力なら最悪"死"もありえるか……。 まぁ、でも思っていたより時間はある。まずこの戦争を終わらせる事が先決だ。 僕はPDAを開きムッキーに電話した。 『これからギルドに戻る。現在の状況をまとめておいて』 大分時間をロスしてしまった、早く指示を出さなくては。 僕はギルドに向け走り出した。 ラストアの街――10:05
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