兵法三十六計③

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『……耐えろ……』 ――えっ!? 今何て……。 また喋るとは思わなかったので聞き逃してしまった。 もう一度確認しようと声を出そうとした瞬間、ハスの花が周囲に。 白い花がみるみるうちに血の様に染まり炎が灯った。 連鎖する炎の花。 周囲が一瞬で業火に包まれた。 【桜花一閃】発動。 オレは刀を下へ向けて振り払う。 桜色の刃が炎の壁を斬り裂く軌道に空気の層が。 「団隊長っ!」 『…………。』 【ダウン・ガード】発動。 最高ランクの楯ですら防ぎきれない熱量。団隊長は頭を下にさげ急降下。 やばい、肌だけではなく肺まで焼けそうな熱さだ。 息を止め、大きな背中をしっかりと掴む。 脱出まで持たないか!? 【水鉄砲】発動。 オレが斬り裂いた隙間から大量の水が流れこんでくる。 きっと怜香さんだ。 水の勢いはかなりの圧力を伴っていて、その周りは尋常ではない熱量により蒸発している。 団隊長はホエールランスを前に構え直し、錐もみのように回転したまま水の中へ。 熱から開放されたが呼吸ができない。 息が限界になりかけた時、太陽の様な灼熱の塊から脱出した。 地上には予想通り怜香さんの姿がある。その周囲には梵字が出現していた。 「早く、そこから離れてっ!!」 団隊長の肩を蹴って、オレは加速し怜香さんの元へ。 梵字からは光線が発射された。 【開花】発動。 【水柱】発動。 後方からの攻撃を桜の蕾がガードし、前方に出現した水の柱が光線の軌道を屈折させる。 『火攻めに、水攻め……定番よねぇ……』 な、何言ってんだアンタ……。 「は、早く逃げますよっ!」 オレは怜香さんを抱え、低空飛行でシヴァから離れる団隊長を追いかけた。
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