兵法三十六計③

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一定の距離を取るとシヴァはオレ達を追ってはこなかった。 やはり南門前から離れないようプログラムされているのだろうか。 その奥では閃光や爆発、粉塵が舞っている。運営とプレイヤーが激しい戦闘を繰り広げていた。 数が多い分プレイヤー側が押しているように見える。 シヴァのターゲットがプレイヤー軍に移る前に倒さなくては。 「団隊長、どうしますか?」 『…………。』 何かを考えているのか、それともただ無口なだけなのか、相変わらず分からない。 鬼丸さえあれば、絶対にダメージを与える自信がある。 遠回りだけど今から戻るしかないよな。とりあえず佐伯から届いたチケットを破った。 いつも一緒だった鞘が出現。それを腰元に装備し、シヴァの動向に目を向ける。 オレ達を睨みつけ、仁王立ちになっていた巨人の顔がゆっくりと動きプレイヤー軍に。 迷っている時間なんてない。 ――あれ? 何か街の方から大きな気配が。オーラでもなく、殺気でもない大きな気配。 どこか懐かしく安心できるこの気配は……。 「団隊長、街から何か変な気配がしませんか? 怜香さんはどうです?」 『…………。』 二人には感じられないらしく、妙な表情で互いに顔を見合わせていた。 『何も感じないわね。私はどちらかと言えば火や水より紐かな』 何の話しをしているんだ。 怜香さんをスルーして、団隊長に意志を伝えた。 「オレは鬼丸を取りに戻ります」 『…………。』 団隊長は一人で戦う決意をしたのか、槍と呼ぶにはあまりにも大きくゴツイ武器を構えた。 「気をつけて下さい、すぐに戻りますから」 風を操作し上昇。 ――!!!! アジトまでの最短ルートを確認していると、頭の中に響く声が。  ≪……ちゃん。     ……兄ちゃん……≫
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