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≪そういう素直な態度だとモテるようになるぜ? 今度俺様がレクチ……み、美咲!!≫
「な、何よ?」
下らないやり取りをしている内に、私は死神リッチと戦うアーツの元に到着していた。
得意な武器ではないのに、死神の攻撃をアーツは蒼く輝いたレイピアで凌(しの)いでいる。
≪ひ、光っているぞ!≫
「分かっているわよ。アンタは私の目線で見ているんだから!」
≪そうじゃなくて!≫
――!!!!
アーツがレイピアを振り下ろすと、碧いオーラで形成された三本の矢が放たれた。
スキルを使っている!?
「アーツさんっ!!」
アーツは私の呼びかけには応じず、リッチの大鎌による攻撃を回避。
表情も、目つきも……いつもの穏やかな面影が一切ない。
≪やばいぞ、完全に呪いが発動している≫
「どうすれば……」
≪気絶させるしかねーな。でも、リッチがいるし……と、取りあえず哲っちゃんに連絡するから≫
正気を失っているアーツのHPバーは半分以下になっていた。
私が戦闘に加わったらリッチだけではなく、アーツにも攻撃されてしまう。
二人同時に、それもSランクのボスと格上プレイヤーを相手に戦うしかない。
まずは、リッチ。
「ポルン、行くわ! 待っていたらアーツさんがやられてしまう」
私は神剣グラネルに想いの力を込める。
【ホワイト・ブレイク】発動。
【姫】発動。
さらに二つの強化スキルを発動し、攻撃力と防御力を上昇させた。
アーツのターゲットが私にこないよう、反対側に回り込みリッチへと向かう。
死神は2mはある大鎌を振るっている。スキルによる攻撃は今のところ見せていない。
正面から斬り込んだアーツのタイミングに合わせて、私は背後から斬りかかった。
――ギィィィン!!
アーツの攻撃を無視して、リッチは鎌でグラネルを受けた。
碧いオーラに包まれたアーツのレイピアはボロ切れのような死神のローブに刺さっている。
この敵……属性効果を理解しているんだわ。
私の攻撃が自分にとって脅威だという事を。
――な、何っ!?
グラネルから異変が。
大鎌と接触している部分から青白いオーラが吸い取られていく。
慌てて剣を引くと、青白いオーラでできていた刀身が一回り小さくなっていた。
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