西門最終戦

5/12
前へ
/40ページ
次へ
私はアーツから離れながらPDAを取り出した。 受信ボックスにはポルンからのメールが。本文も読まずに添付アイテムをチケット化した。 ――チャリーン!! 小銭が地面に落ちたような音。 嫌な予感がする。 ≪46000GPを支払いました≫ 画面にはそう表示されていた。 こんな時にアンタ……。 怒鳴っている時間などない、私はすぐにチケットを破った。 現れたのは赤を基調としたどこにでもあるようなスプレー缶。表面にはドクロのマークが大きく描かれていた。 ≪それをアーツに吹きつけろ! 五分間相手の物理攻撃力を無効にする優れ物だ≫ そんな都合のいいアイテムが……怪しいわ。本当に大丈夫なのかしら。 【飛燕斬(ひえんざん)】発動。 私を追いかけてくるアーツからオーラで出来た無数のクナイが放たれた。 立ち止り、グラネルの能力を開放して攻撃の軌道を逸らしながら、アーツに急接近。 ≪チャンスだ、いけっ!≫ 左手に持つスプレー缶のプッシュボタンに指をかけた。 広範囲に広がる霧なら当たるはず。 私はアーツの一撃を回避し、すれ違いざまにスプレーを吹き付けた。 顔部分と胸元に噴射された赤い霧。目に入った筈なのに、アーツはレイピアで私が持つ缶を正確に切り裂いた。 何の薬剤か知らないけれどかける事には成功した。すぐに壊されてしまったので分量が足りているか不安だわ。 ≪よしっ! 大丈夫だ、少しでも薬剤がかかれば15分後には効果が現れるからな!≫ 15分後……。 ――首を締めたい。 今すぐこのトナカイの首を絞めて息の根を止めたい。 「15分もアーツから逃げれる訳ないでしょ、それまでどーすんのよっ!」 ≪……あっ……そ、そこはほら、あれだ、美咲さんのお力で何とか……≫ 「何とか出来ないからアイテム使ったんでしょっ!」 ――ザシュッ!! 左肩口に鋭い痛みが走る。 完全にアーツの間合いに入ってしまった。 連続的な攻撃を回避するが、小さくなったグラネルでは受け切れない。 距離を取ろうとバックステップしても、すぐさま間合いを詰められてしまう。 ≪いい、今、なんとかするから……≫ もう、アンタには期待しないわ。 私はポルンへの怒りを抑えられないまま、グラネルを強く握り締めた。 青白い刀身が真っ赤に染まり伸びていく。 あら……怒りの想いでもいいのかしら?
/40ページ

最初のコメントを投稿しよう!

532人が本棚に入れています
本棚に追加