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――ガキィィィン!!
ビリヤードのようにグラネルが当たって弾き飛ばされたレイピア。
アーツは目の前に落ちた神剣を拾おうとしゃがみ込んだ。
後方を確認すると死神が立ち上がりかけている。
≪バカッ! 武器投げちまってどうすんだよ! そこでは俺様の目が使えないぞ≫
私は背を向けるアーツに飛び掛かり、後ろから首を羽交い締めに。
≪お、おいっ、離れろってっ! 刺されるって!≫
耳元で叫ぶポルン。
うるさいわね、よく見なさいよ。
もがくアーツの首をありったけの力で締め付けながら、落ちているグラネルに視線を向ける。
アーツの首には私の腕が完璧に入っている。落ちるのも時間の問題。
≪――あっ!! そうか!≫
アーツは地面に転がるグラネルの柄を掴み持ち上げようとしているが、剣はビクともしない。
「グラネルは女性専用の武器なのよ」
≪よっしゃっ、早く落としちまえ!≫
締めつけながら後ろを見ると、鎌を構えた死神が浮遊するように向かって来ている。
絶対のこの腕は離せない。
早く、早く落ちて……。
武器を拾い上げる事を諦めたアーツは私の腕を引き離しに掛かってきた。
死神の殺気はどんどん近づいてくる。
どうしたら……。
≪おおお、おい!! 死神が来るぞ! あ、でもやっぱり離しちゃ駄目だ! だけど死神が……≫
どっちなのよっ!
私は既に感覚のない腕に力を込め、のけ反る様に顎を上げ叫んだ。
「偉そうに指示するんだから、自信持って言いなさいよっ!!」
≪――そ、そのまま落とせっ!!≫
わかったわ。アンタがそう言うなら落とすまで絞め続ける。
ポルンの一言で背後から迫る死神の恐怖は消えた。
激しく暴れていたアーツの体からすぅっと力が抜けていく。
私は腕を離し後ろを振り向いた。
――!!!!
完全に死神の射程距離。
振り上げられた大鎌は既に動き出していた。
狙いは私の首。
これを防ぐ武器は何もない。
≪美咲ぃぃぃぃぃ!!≫
私は目を閉じるしかなかった。
――ギィィィィン!!
「うぉらぁぁぁぁ!!」
この声は……修司!?
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