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「修司っ!! その場から逃げてっ!」
槍先を下にさげ、うずくまる修司に降り注ぐ闇の一撃は止まらない。
私はいう事のきかない足を叩きながら、よろよろと立ち上がった。
「リッチッ! アンタの相手はこっちよ!」
叫ぶ事で敵の意識をこっちに向けようとしたが、修司に浴びせられる攻撃は尚も続く。
「お、俺様の獲物だ。お前は黙って待っていろ。 こ、こんな攻撃……ぜ、全然効いてねーぞ……」
逃げる事もせず、ガードすることもせず、修司は立ち上がった。
「……ア、アンタ……」
敵を睨みつけながら修司は両手で槍の中央を持ちゆっくりと回し始めた。
「俺はこんなところで、死ぬわけにはいかねーんだっ!」
回す度に強くなる輝きが黒い一撃を弾き返した。
【蒼天爆手】発動。
(そうてんばくしゅ)
黄色と蒼のオーラが混ざり合いグングニルに絡みつく。
振り上げた槍の後上方には、巨大な槍が。
いつのまにこんなスキルを?
死神を狙って斬り付けるグングニルの軌道と、まったく同じ動きで巨大な槍が振り下ろされた。
見たことのない一撃が、リッチの持つエリオットの鎌ごと破壊し、左肩口から斜めに切り裂いた。
さらに接近する修司が細かい動きで敵を切り刻んでいく。
斬る度に黒いオーラが霧散(むさん)していた。
「――グラネルッ!!」
私が神剣の能力を開放し漂う黒い霧を吹き飛ばすと、露(あら)わになった頭蓋骨だけが宙に浮いていた。
「カチ割れっ!! 美咲っ!!」
後はこの振り上げたグラネルを振り下ろすだけでいい。
想いなら、もうありったけ込めているから。
早く終わらせて、柚葉や哲二……蓮の元へ。
――パキィィィィィン!!
頭頂部から下顎(かがく)まで、真っ直ぐ線を引いた様に亀裂が入る。
その隙間から濃い闇のオーラが流れ出し空へと吸い込まれていった。
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