兵法三十六計③

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浮き出た複数の文字から放たれるのは光線。視認できるだけで正面に八つ。 頭を下にさげ地面へと急降下。一斉に発射された光線を掻い潜ることに成功したが……。 ――!!!! 地面には、事典なみにぎっしりと梵字が画かれていた。 まじかよ。 広範囲過ぎて逃げ場がない。 防御スキルを発動するためオーラを集めていると、横から団隊長が現れた。 イージスの楯から溢れ出す光がオレと団隊長を包み込む。 上下左右から止む事の無い攻撃を強力なバリアで遮断した。 だけど、 「団隊長、このままではまた錫杖で……」 『…………。』 相変わらず口は開かないが、その表情が分かっていると言外(ごんがい)に語っていた。 予想通り上空からは錫杖が振り下ろされてくる。 団隊長は巨大な楯を上に構えスキルを発動した。 【獣王】発動。 赤いオーラが団隊長の左腕を包み込む。 通常赤いオーラは攻撃強化系が多いけれど……それを防御に回した? ――!!!! 錫杖とイージスの楯がぶつかり合うと鼓膜が破れそうな程の轟音が。 しかし、衝撃はあまり感じない。 団隊長は地面のない上空で錫杖の一撃を受け止めていた。 この人は"断罪の壁"の二つ名通り、オレが知る中で最高の防御力を誇っている。 でも、それだけではこの破壊神は倒せない。 もう一度奴に……。 斬り付けるよりは、突いたほうが折れにくいんじゃないか。 そう判断し、攻撃力を上げる為一度鞘に戻した。 【居合】発動。 【葉桜】発動。 通常防御に使う【葉桜】を刀身を守る為に使用してみる。 さっき団隊長が見せた使い方の逆だ。 考えられる事は全てやるつもりだが…… 刀が折れた時の手ごたえが、まだ右手には残っていた。 きっと折れる。 でも、やるしかない! 覚悟を決めた瞬間、PDAから軽快な音楽が。 この着信音に設定したのは……。 ――佐伯だ。
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