兵法三十六計③

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完成した報告だと思い喜び勇んで電話に出たが、佐伯の声は明らかに動揺していた。 ≪蓮ちゃん、鬼丸が……≫ 「ど、どうした!?」 そもそも電話してくる事自体がおかしい。 完成したのであればすぐにメールに添付して送って来るはずだ。 ≪鬼丸は治ったんだけど、鞘しかチケット化しないの。だから送れなくて……≫ チケット化しない? 一体なぜ……。 オレは今まで鬼丸を常に装備していたのでチケット化した事が無い。 シャークだって数珠丸をわざわざ黒い空間に入れ、必要な時に取り出していた。 天下五剣は……意思が宿っているからチケット化できない!? 佐伯との会話中に、団が初めて口を開いた。 『…………乗れ……。』 この場から離脱するつもりか? オレはこのチャンスを活かせないもどかしさを感じながらも、他に成す術(すべ)が無いので渋々背中に乗った。 ≪それでね、直接持っていこうと思ったのよ。だけど赤いオーラに包まれちゃって、アタシには触れることすら……≫ 「わかった。何か変化があったら連絡して」 ≪取りあえず鞘だけ送っておくね。 ……蓮ちゃん、早くこの子の所へきてあげて≫ 佐伯との通話を切る。 既に大きな背中は動き出していた。 光線、錫杖、スキルによる攻撃を回避しながら離れて行く。 南門から遠ざかる様に。 「団隊長の攻撃でもダメージを与えられませんか?」 『…………。』 口を閉ざしたってことは無理なのか? まだこの人の事がよく分からないから判断が……。 雷斗さんやパトリシアさんは、団隊長とどうやって意思疎通を図っているのだろう。 【マントラ(ペメ)】発動。 【マントラ(フム)】発動。 手の平サイズの白いハスの花がシヴァの手元から放たれた。 その数は……数千!? 空間を移動させる梵字のスキルに吸い込まれているので、取り囲まれるのも時間の問題だ。 このハスの花のような能力は一体なんだ……。
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