初心

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「ノア、さっそくだけどシャークの現在位置を捕捉してくれるかな」 ≪了解しました。…………捕捉完了。本艦から8時の方向。ラストア北東にて捕捉≫ 「画面を映し出して」 ≪映像を送信いたします≫ モニターに映し出されたシャークは、色とりどりのオーラを身に纏いスキルを発動しているようだった。 柚葉さんの姿はない。 「プレイヤー名"滝澤柚葉"を捕捉できる?」 ≪捕捉済みです。ラストア北門から北北東に向かい時速60kmで移動中≫ えっ、時速60km? どうしてそんなスピードで……。 「画面を柚葉さんに切り替えて」 ≪了解いたしました≫ シャークに変わって画面に映し出されたのは、赤龍ガルストーム。その背には半べそをかきながら叫んでいる柚葉さんの姿が。 『しゃ、社長ぉぉぉぉ!!』 そういうことか。 スクリーンに貼り付いたムッキーが邪魔で仕方がない。 柚葉さんには申し訳ないけど、ここは心を鬼にして…… 「ノア、このままシャークさんから連絡が入るまで待機して」 『なっ!? なぜですか、なぜ女神を救いに行かないんですかっ!』 言うと思った。 赤龍の後を追うのは大勢のボス達。 きっとシャークは複数のボスと同時に戦いたいのだろう。しかし、自分は街に近づくことができない。 だから生贄(柚葉)を敵の巣窟に送り込んだんだ。 興味がないような事を言っていたけど気が変わった? もしくは…………。 『お願いです! 女神を、社長をどうかお助け下さい!』 ムッキーの気持ちもわかるけど、ここは心を鬼にしなければ。 だって、そのままシャークと一緒にいれば柚葉さんには多くの経験値が入るから。 レア☆5の職業が、新しいスキルを覚えるかどうかで戦況が大きく変わってくる。 「画像はもう消して」 『社長おぉぉぉぉぉ!!』 ムッキーはいつまでもスクリーンにすがりついていた。
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