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視点 向木田 勝洋
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たとえ世界が滅びたとしてもやってはいけない事を私は……。
女神像をこの手で破壊してしまうなんて。
死んで詫びるしかない。
だが、詫びるにも女神は何処にいるんだ。
『爆発の連鎖は順調です』
分かっている。
押してしまったショックで呆けた私は、女神像の爆発からずっとその連鎖を見ているのだから。
粉塵で数m先すら分からない景色を窓越しに眺めていると、爆発の衝撃で弾かれた岩の塊や材木がギルドにぶつかってくる。
まったくもって問題ない。
ギルド周囲には電磁波のようなバリアが張られ、衝撃をことごとく防いでいるからだ。
全て、副社長のいう通り。
あとは待機しているプレイヤー達をミッションに送り込めばいい。
死んで詫びる前に仕事はきっちり終わらせよう。
「全員揃っているな?」
『一部の負傷者を除き全員』
「移動させたギルドBOXは……」
『チーム単位で接続できるようになっております』
私は部下に確認をしながら全員が集まる大ホールに向かった。
大きなドアを力一杯開けると気圧差からか風が吹きつけて気持ちがいい。
汗が引いていくようだ。
中に入るとプレイヤー達のざわめきが聞こえる。
ズラッと並んだギルドボックスには長蛇の列が。
通路を進み壇上へ向かう私に視線が集まっていく。
『おい、デカ男がきたぜ』
『あいつ融通がきかねーよな』
『キモッ、また大汗かいてる』
ふん、私に人望がないことなど知っている。
それでも構わない。女神様さえわかってくれれば。
私はスクリーンのある壇上へと上がりプレイヤーに向き直った。
「えー、これから……」
あれ、マイクの音声が入ってないぞ。
「あーあー……」
駄目だ。電源は入っているが音が出ない。
私は舞台袖にいる部下に合図を送り新しいマイクを要求した。
――!!!!
『きゃぁぁぁぁ!!』
『うわっ、あいつだっ!』
『運営!?』
全員の視線は私の――後ろ?
振りかえると画面には運営の姿が。
確かこの男の名はカトラス。
そうだ、裏切り者の集会でやる気のなさそうに説明していた男だ。
≪戦争、お疲れさま。これから祝勝会でも開くのか?
それとも……
ミッションに逃げ込んで、街の外に脱出でもするのか?≫
いつもとは違う汗が私の背筋を流れた。
副社長の作戦が読まれている。
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